機械式電圧レギュレータ

夏前に、LLCがオーバーフローしたとき、水温の他に電流計の動きが変なことに気づいていました。走行中の充電電流が20Aある。止まったときの放電電流も20Aある。要するに、充放電電流が異常に大きいのです。

普段はこんなに電流計は動きません。当時、これは熱のせいではないかと思いました。

現代のクルマは、オルターネータにIC式の電圧レギュレータが内蔵されています。しかし、1968年式のコルベットの電圧レギュレータは、オルターネータとは別にエンジンルーム内に設置されていて、しかも機械式。機械式の電圧レギュレータというものが、私には想像できなかったのですが、熱補償が精密にできないならそういう事もあるのかも、と思いました。

コルベットのレストア用パーツのカタログのなかに、IC式レギュレータのキットがあります。機械式のレギュレータの中身だけをIC式に入れ替えるものです。したがって、外観上はまったく変わりません。

これを購入してみました。
IMG_20191215_181032

レギュレータのケースを開けて、中身をこれに入れ替えるだけです。

クルマの電装品に一般用のICが使われていると、熱でダメになることが多いので、使われているICを調べてみました。

きちんと自動車用です。耐熱温度150℃。これなら安心です。
191216-01

これを交換すべく、今付いているレギュレータの箱を開けてみました。そして、驚愕の事実。

確かに機械式でしたが、ピカピカに新しい。

サービスマニュアルに記載されている形状とは全然違うので、これも2001年に行われたレストアで交換されたリプロダクト品だと思います。
IMG_20191124_114301

それにしても、21世紀にわざわざ機械式の電圧レギュレータ。IC式よりずっと高価だと思います。容易にIC式に交換できるし、交換しても見た目はまったく変わらないのに(購入したICレギュレータのキットには、交換することでクラシック・コルベットの鑑定には影響しないと書かれていた)、わざわざ機械式に交換したのは、きっとレストアした人の拘りなのでしょう。68年式にICの部品を使ってはイカンみたいな。あ、でもMSDは使われているなぁ。

せっかく、綺麗な機械式が入っていたので、IC式には交換しないことにして、このまま蓋を閉じました。

フルトラのイグナイタとMSDさえ元に戻せば、EMP兵器が使われた後でも、多分このクルマは走れます。
核戦争で使われたEMP爆弾によって、多くの生物とコンピュータが死滅した後の世界で、生き残った僅かな人たちが、誰もいない街を1960年代のクルマで疾走する。B級カーアクション映画のネタにできそうな気がしました。

機械式の電圧レギュレータを初めて見ましたが、どうやらコイルに流れる電流によって接点を切り替えるようです。機械式リレーの組み合わせで構成されていました。昔の人は、こういう仕組みをよく思いつくものだと、古い機械をみると感心することが多いです。