パワステ・フルードを交換するつもりで作業を始めましたが、「補充」になりました。
パワステ・フルードは、一般的には交換しません。エンジンのようにブローバイガスにさらされるようなこともなく、外気と接触することもないので、車両寿命まで持つとされています。しかし、それは車両寿命を15年とか20年くらいに想定している場合。車齢が50年を過ぎたクラシックカーの場合は、履歴が不明な油脂類は交換しておくのが無難です。
パワステ・フルードは交換を前提としていませんので、交換可能な構造にはなっていません。完全に交換したい場合は、ポンプとアクチュエータを繋いでいる高圧配管をはずして、そこから古いフルードを抜きつつ、新しいフルードを入れるのですが、高圧配管を外すのはリスクが高く、下手をすると面倒な作業を背負いこむことになるので、今現在、正常動作しているなら、やらない方が無難です。
「正しく動作している機械は触るな」
という教訓があって、私の経験からも、だいたいこれは真実です。
なので、アメリカ人の大好きなターキー・ベイスター法を使います。リザーブタンクのフルードだけを交換する方法です。完全な交換にはなりませんが、4-5割は新しいフルードになるので、これをこまめに繰り返せば、まあ大体新しいフルードに入れ替わるというわけです。リザーブタンクのキャップ以外は何も外さないので、余計な故障を呼び起こす危険性は皆無です。
パワステ・フルードはサービス・マニュアルを見ても、何が指定されているのかハッキリしなかったので、ATFでも入れておこうかと思いましたが、ネットで調べていたらこんなのを見つけたので、買ってみました。
ブランドイメージとして、1960年代のアメリカ車に使うにはふさわしい感じなのが決め手です。現代日本でSTPプランドの油脂が出回っていることに、少し驚きました。
色は少し黄色ががった透明。匂いがないのでギアオイルというわけではなさそうです。
「ホンダ車、欧州車には使用できません。」
と書かれていますが、なぜかは書いてありません。なぜなんだろう。
パワステ・ポンプはこれ。オルターネータの下に設置されています。
GMの生産時の記録では、このクルマにはパワステのオプションは選択されていません。2004年かそこら辺で、パワステが後から追加されています。GM純正品の当時物リビルド品のようです。
ともかく、タンクのフルードを抜けるだけ抜いて、こいつを入れようと思い、まずはタンクのキャップを外してみたのですが。
タンクキャップのスティックに、何もフルードが付着していない。
えっ? どういう事?
キャップがオルターネータの下にあって、見づらいのですが、鏡を駆使して中を覗いてみたら、フルードが入っていませんでした。
僅かずつ、滲むようにして、長年をかけて減ったのでしょう。パワステ自体は正常動作しているので、ポンプの中にはまだ残っているのだと思いますが、このままにしておくと、やがてはポンプのフルードもなくなって、壊すところでした。
というわけで、ターキーベイスターで抜くべきフルードがなかったので、今回は規定量まで「補充」となったのでした。これで、しばらく乗って、新しいフルードと古いフルードが混じったら、リザーブタンク分を抜いて新しいのを補充する事を繰り返します。
例えば、1回に50%が入れ替わるとしたら、それを3回繰り返すと
1-0.5^3=0.875 すなわち88%が入れ替わるという計算になります。高圧ホースを外すような危険を冒さなくても9割のフルードを入れ替えることができるというわけです。