サービス・マニュアルとアッセンブリ・マニュアル

年式が確定したので、年式固有の資料を購入しました。
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SERVICE MANUALとは日本で言うところの整備解説書。
もちろん、当時物ではなくGMのライセンスを受けてのリプリントです。デジタル化される以前の時代のものですから、既出版物からのコピーのようで、写真や一部の文字が見にくいのですが、50年を経た今でもちゃんと入手できるところが、Corvetteの良いところです。

CD-ROM版も購入できますしその方が安いのですが、紙の方がいつでも手に取ってパラパラと眺めることが出来て便利です。こういうのは、時々眺めていて、どんな情報が載っているかをなんとなく記憶しておくと、色々な場面で

「そういえば、そんな記述があったなぁ。」

という知識となって、役に立つのです。

現代のコルベットと違って電子系のダイアグノーシスがありませんから、情報量はとても少ないです。このマニュアルはCorvetteだけではなく、ChevyやChevel、Camaroなどと合本にっています。情報量としては現代Corvetteの1/10程度でしょう。

しかし合本になっているからこそ、興味深いこともあります。

例えば、これはCamaroのフレーム概略図。
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これがCorvetteのフレーム概略図。

エンジン搭載位置を比較してみてください。Corvetteは完全なフロント・ミッドに搭載されています。Corvetteは設計コンセプトとして、きちんとスポーツカーのセオリーに従っていて、Camaroは実用性を重視していることがわかります。
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もう一冊のこちらは、Assembly Manualです。
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これは工場の組み立てラインで使われるものです。こういうマニュアルが市場に流通しているのは非常に珍しいのではないかと思います。整備解説書と違って、メーカー内で使われる書類ですから一般に流通することは普通のクルマでは考えられません。

いくつかの装丁で流通していて、私は製本されているものを買いましたが、アメリカ特有の3穴のルーズリーフタイプで専用バインダーと共に売られているものもあります。GMの許諾を得てプリントされたものだと思いますが、これもSERVICE MANUALと同様にオリジナルのコピーの印刷です。

SERVICE MANUALにはすべてのパーツが図示されているわけではありませんが、Assembly Manualは、その目的から考えて全てのパーツが図示されていると思います。単なる興味から購入してみましたが、具体的な部品の組付けの参考になるので実用的な資料でもありました。
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これを見ていて思うのは、現代のクルマよりも部品点数が多いこと。意外かもしれませんが、現代のクルマの方が生産技術の進歩と電子化によって部品点数そのものは減っています。今なら、複雑形状の部品でもプラスチックの射出成形の1個の部品で済みますが、この時代は複数の板金部品を組み合わせていたり、細かなリテーナー的な部品を追加していたりなど、とにかくこまごました部品がとても多いです。

他にも配線。現代のクルマであれば下請けが作った計器盤アッセンブリにコネクタを1個挿すだけみたいな構造ですが、この時代は計器を一つ一つベゼルに収めて、それぞれに配線を繋げるという、カスタムカーのような構造になっています。

まあ、だからこそ大抵の部品は修理可能だし、製作も難しくないのですけれどね。

ただ、これだけの部品点数を組み上げるのにかかる時間と、クルマの販売価格、そして支払われる賃金と一般庶民の生活水準。現代のバランスでは経済的に成り立たないような気がするのですが、これがアメリカがいちばん裕福だった時代のものなんですよね。
アメリカだけでなく日本も含めて国が破綻寸前の経済バランスになっていますが、どこでボタンを掛け違えたのでしょう。