アメリカにはClass-Action(クラス・アクション)という集団訴訟の方法があります。これは、たとえば
「10万キロ使えるという仕様のタイヤを買ったのに、実際には5万キロしか持たなかったじゃないか。インチキだ。タイヤ代とタイヤ交換にかかる費用を払え。」
というような訴訟を誰かがメーカなどに対して起こして勝訴した場合に、その裁判に一切関わっていなくても、そのタイヤを買った人には、自動的に賠償金が支払われる仕組みです。
私もアメリカ在住時に、ある日突然、知らない法律事務所から封筒が届いて、
「あなたにはXXのClass-Actionの賠償金を受け取る権利がある。権利を放棄する場合は、この書類にサインして送り返してほしい。受け取る場合は、何もする必要はない。」
みたいな通知を受け取ったことがあります。面白いから受け取ってみようと思って、放っておいたら、忘れたころに数十ドルの小切手が届きました。確か、クレジットカード関連じゃなかったかな。
日本では、
「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続きの特例に関する法」
というのが、アメリカのClass-Actionに近いらしいですが、アメリカの仕組みとは少し異なるようです。それにしても、名前が長いよ。
それで、ここまでClass-Actionを説明した上で、ここから本題。
実は、C7のコルベットZ06はアメリカの一部の州でGM相手にClass-Actionの訴訟が行われています。
正確に覚えていないのですが、C7Z06の初期の広告に、
「サーキットを走るために必要なのはあなただけ」
みたいなキャッチコピーがありました。すなわち、C7Z06は特別な改造をしなくても、サーキットをガンガン走れますよ、という意味に消費者は受け取るわけです。
ところが実際にC7Z06のオーナーがサーキットを走らせると15分ほどで、温度上昇のためにLimp Modeに入ってしまうそうです。Limp Modeというのは、車両保護のために出力や速度を制限するモードです。これが、宣伝文句と違うじゃないか、設計ミスなんじゃないか? 金返せ。
という訴訟になっているという事。
まあ、古くからの自動車マニアの感覚からすると、公道走行を前提としているクルマが、無改造でサーキットを全開で走るのは無理なのは当然、だと思うわけですが、でも、メーカーが無改造でサーキットを走れるという宣伝をしているわけだし。訴訟大国のアメリカでは、こういう事態になっても不思議ではありません。
このClass-Actionは、とりあえず州単位で訴訟を起こしているようなので、日本のユーザーが何もしなくても補償金を受け取れるということはないと思いますが、将来的に納車済みのZ06の熱対策のための改修が行われる可能性はありますね。
担当法律事務所のサイト: hbsslaw.com