ミッドシップ・コルベットの噂

10日ほど前から、次期コルベットはエンジンがミッドシップになるという話題がインターネット上で盛んです。これについての私見。

事の発端は、この写真。リンク先には、別の角度からの写真もあります。
160922-01
ソース: http://www.autoblog.com/photos/2019-chevrolet-c8-corvette/

2019年モデルのC8コルベットと書かれています。車体形状から推測すると、リアミッドシップであることは間違いないと思いますが、C8へのモデルチェンジ時期や、そもそも、これがコルベットであるという根拠は何もありません。

そして、この写真からレンダリングされたのがこれ。
160922-02
160922-03
ソース http://blog.caranddriver.com/everything-we-know-about-the-mid-engine-c8-corvettes-dual-clutch-transmission/

これらの推測記事を見て、次期コルベット(C8)はミッドシップだ、という半ば確信めいた記事が氾濫したのです。おまけに最新の情報では、3ペタルのMTも廃止される、とまで書かれています。

しかし、私はコルベットがミッドシップになることはあり得ないと思います。
コルベットの購入者はリピーターが多いのです。今もコルベットを持っているから買い替える、増車するという人。それから、初めてコルベットを買う人たちの中には、父親が乗っていた、祖父が大事にしていた、という子供の頃に身近な人が持っていたことによって憧れがとなった、と言っている割合が、他のスポーツカーと比べると非常に多い。
すなわち、コルベットの購入者は保守的な層が多いのです。
コルベットは年間3万台ほど売れます。7万ドルを超える2シーターの高級スポーツカーで年間3万台というのは、他の車種ではあり得ません。GMのドル箱です。そして、そのコルベットの販売台数を支えているのは、コルベット・ファン。ミッドシップにすることで、これまで60年以上にわたって積み上げてきた、固定客が離れる可能性があります。ポルシェ911がリアエンジンを採用し続けているのと似ている状況です。

パフォーマンスの視点ではどうか?
これもミッドシップを採用する必然性が見つかりません。もともとコルベットはフロント・ミッドシップのレイアウトです。私自身は、あまり意味があるとは思いませんが、よく引き合いに出される前後車軸の重量比は50:50。そして、様々な雑誌が行うパフォーマンステストで、ミッドシップのV8フェラーリを凌駕する性能をすでに獲得しています。市販車のシャシーをほぼそのまま使うLMGTクラスのレースでも常勝。ここでも、ミッドシップが有利とする根拠は見当たりません。

そもそも、昔からコルベットは各世代で必ず一度はミッドシップの噂は出ていました。これは恒例行事みたいなものだと思います。

それに、コルベットは習作としてコンセプトカーを良く出します。記憶に新しいところでは、2009年のStingray Concept。当時は、GMが正式に否定していたにもかかわらず、C7のコンセプトモデルなのではないかと言われたものです。結局、ここからC7の面影はまったく見られません。
160922-06

そういったコンセプトカーの中にはミッドシップ・エンジンカーもあって、例えば

Corvette Indy
160922-04

Corvette CERV-III
160922-05

今回、写真が撮られたのも、こういったコンセプトカーの1台ではないかと私は思います。

一方で、このミッドシップ・スポーツカーはキャデラック・ブランドで販売されるのではないかと予想している人たちもいます。私としては、こちらの方が可能性が高いと思っています。
コルベットは従来通りの顧客層を保持しつつ、新たな顧客を開拓するために、別の名前で販売するのです。ポルシェにおけるケイマンに相当するものです。
価格的にはケイマンより上でV8フェラーリより下。ちょうどフォードGTやアキュラNSXあたりの層をターゲットにするのが、キャデラック・ブランド的にも合っているように思います。

というわけで、今回の一連の騒動。いつものコンセプトカーか、キャブラック・ブランドの新型スポーツカーであるというのが、私の推測です。