昨日の続き。
補機類を付けて、オイルを入れて、エンジン始動。
オイル漏れなし。寒いので試走は省略。
これで、もうオイルシールが切れることはないはず。
今回、オイルシール交換作業と同時に、オイル周りの継手をAN継手に変更しました。
とは言っても、ANホースとホースエンドがなかったので、NPT→AN変換継手を付けて、普通のホースをエコノフィッティングで無理やり付けているだけですが。
日本で普通にAN規格のホースや継手を買おうとすると、あっという間に数万円が飛んで行ってしまうので、海外に発注しました。それが届くまでの代用処置。
NPT-AN変換継手は、エンジンが降りているときの方が断然作業しやすいので、とにかくこのタイミングで交換しておきたかったのです。
それで、ここの継手を変更しただけで、エンジンを始動した直後の油圧が下がりました。
「油圧が下がる=トラブル」
と考えがちですが、この場合は良い方向です。
どこの油圧を計測しているかによるのですが、このクルマの場合、オイルポンプ直後の油圧を計測しています。
オイルパン→オイルポンプ→油圧計→オイルフィルター→オイルクーラー→エンジン
という経路です。油圧のコントロールはエンジンに入った直後で行われていて、ここにはいっさい手を付けていないので、この場合で油圧が下がるのは、エンジンまでの圧力損失が小さくなったということです。
なぜ圧力損失がちいさくなったのかというと。
ここの継手は、以前はこんなのが使われていました。
二つの継手を組み合わせて90°に曲げています。ダメでしょ。こんなの。
配管の中を粘性流体が流れる場合、配管の内壁との流体摩擦などによって、流体のエネルギー損失が発生し、結果として圧力が減少します。これの計算は非常にやっかいなのですが、簡易的には損失係数というものが使われます。流れの形状によって、この損失係数の目安があって、流体力学の教科書には、大抵いろいろな形状の損失係数の一覧表が載っています。
流体の向きを90°曲げるときに、いきなりカクッと曲げるのをエルボ、弧を描いて曲げるのをベントと言いますが、エルボの損失係数はベントの3~5倍です。すなわち、3~5倍流れにくいということ。さらに、流体の口がいきなり広がるところも、損失が発生します。
この部品をAN継手のベント管にしたことで、この二つの圧力損失がなくなったわけです。油圧経路全体からみれば、この部品一個くらいの圧力損失は全然小さいと思っていたのですが、そうでもなかったみたいで、この部品が変わっただけで、全体の圧力損失が小さくなりました。
NPTのバーブ継手からAN継手に変更しようと思ったのは、配管のホースを耐圧の高いものに変更したかったから。冷間始動時に配管には1MPa以上の圧力がかかっているのですが、今のホースの定格耐圧が1MPaなんです。破裂圧力はもっと高いので、破裂することはないですが、寿命は極端に短くなると思われるし、バーブ継手にホースバンドでは、いつか抜けるかもしれないという不安がいつもつきまとっていました。
そこで、より耐圧の高いホースにするため、AN継手に変更することにしたのでした。今回は部品が間に合わなくて、中途半端な状態になっていますが、部品が届いたら、エンジンから外に出ている油圧系配管は、全部AN規格に入れ替えます。