クイック・タペット調整法

550Spyderのタペット調整2回目です。
先週の早朝ドライブでタペット音が耳についたので、タペット・ギャップを再調整します。整備解説書による規定値は0.15mmですが、前回は0.1mm(気持ちきつめ)に調整しました。今回は0.05mmに調整してみます。一般的には狭すぎですが、このエンジンの構造を考えると、温間時にはギャップが広がる方向だと思うので、冷間時調整で0.05mmは問題ないと考えました。

ところで今日は、4気筒エンジンのクイック・タペット調整法を伝授しましょう。レースの現場などでは良く知られている方法ですが、なぜか整備の本には書かれていません。知っていると、タペット調整が格段に楽に出来ます。もっとも、今時のクルマはタペット調整を必要としないので、知ってどうなるというものでもないかもしれませんが、旧車やHLAを使わないレーシング・エンジンでは使えます。

一般的な整備本では、まず1番の圧縮上死点を出して1番の調整、そこからクランクシャフトを180°回して(点火順が1-4-3-2の場合)4番の調整、さらに180°回して3番、最後にもう180°まわして2番の調整と記述しています。すなわち、各気筒それぞれを圧縮上死点にして調整するということです。
しかし、よく考えてみてください。バルブが開いているのは4サイクルのうちの1サイクルだけです。残りの3サイクルではバルブが閉じています。ですから、いちいち圧縮上死点にする必要はありません。

そこで、こうします。
まず、バルブカバーを外します。そして、クランクプーリーをTDC(Top Dead Center 上死点)に合わせます。クランクプーリーのTDC位置は、1番が圧縮上死点なのか3番が圧縮上死点なのかわかりません。1番が圧縮上死点になっている可能性は1/2ですが、気にする必要はありません。ロッカーアームを見れば圧縮上死点が1番なのか3番なのかがわかります。もし3番が圧縮上死点にあれば、3番から作業を始めれば良いだけです。

ここでは、1番が圧縮上死点だったとすると、2番は排気工程が始まる下死点になっています。すなわち2番の吸気バルブは完全に閉まっています。さらに、4番は圧縮工程が始まる下死点です。すなわち、排気バルブは完全に閉まっています。したがって、1番が圧縮上死点あるときは、1番の吸排気バルブ、2番の吸気バルブ、4番の排気バルブのタペット調整が可能です。これで一気に4個のタペット調整が終わりました。
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次に、クランクプーリーを360°回して、もう一度TDCにあわせると、次は3番が圧縮上死点になるはずです。そうすると、先ほどの逆になって、3番の吸排気バルブと4番の吸気バルブ、そして2番の排気バルブが調整可能になるはずです。これで残りの4個のタペット調整ができました。
ほら、クランクを回すのは、最初のTDCを合わせた時と、次のTDCを合わせた時の2回だけで済みました。簡単でしょ?

文章で書くと混乱するかもしれませんが、実際にやってみると、すぐにわかります。

 

それから今回は、バルブカバーを外したついでに、バルブカバーのパッキンを交換しました。どうも、バルブカバーからのオイル漏れが多いみたいなのです。水平対向エンジンは、バルブカバーとヘッドの境目に、常にオイルがいるので、ここのシールが弱いと漏れちゃうのですよね。
このパッキンは、そんなに劣化しているように見えなかったのですが、新しいパッキンと比較すると、違いは歴然でした。古いパッキンは結構硬化していて、新品と比べるとカチカチになっていました。
弾力性のある新しいパッキンに交換したことで、オイル漏れが減ると良いのですが。
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今日は雨が降っているので試走はおあずけ。これでタペット音が静かになって、オイル漏れもなくなっていることを期待します。