Z4のDCT

自動車のなかで、もっとも複雑な構造を持っているのは、エンジンではなくてトランスミッションです。クルマのメカ好きのほとんどの人は、エンジンの動作については知っていますが、トランスミッションになると、構造を理解している人は少ないです。

私は若いときにMTとATをそれぞれ自分でオーバーホールした経験があって、実は分解したときに初めて構造を理解したのでした。それまでは、本で読んで漠然と理解していましたが、実際に部品を目で見て、手で動かしてみるまでは、具体的な動作をイメージできていませんでした。

さて、もうじき納車されるZ4には7速DCTが搭載されています。グレードを25iや20iではなくて35iにしたのは、この7速DCTに興味があったというのが理由のひとつです。
DCTの動作については、これもまた漠然と知っているだけ。そこで、こんな本を買ってみました。
「モーターファン イラストレーテッド トランスミッション・バイブル」
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モーターファンと言えば、カーグラフィックと並ぶ、ちゃんとした自動車雑誌の双璧でしたが、ずいぶん前に廃刊になったと記憶しています。今は、ムック本という形式で復活していたのですね。ひとつのテーマを掘り下げる紙面構成には好感が持てます。
内容はもちろん素人向け。自動車を趣味としていて、メカに興味がある人がベッドに寝転がって読んだりするのにはちょうど良いレベルになっています。もちろん、工学の専門知識は要りません。文系の人にも理解できるように書かれています。
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この本にはDCTだけでなく、コンベンショナルなMTからCVTまで、一般的に使われているトランスミッションの解説があって、いろいろと勉強になりました。それで思ったのは、トランスミッションは凄く進化しているということ。
クルマのエンジンは、昔から基本構造はほとんど変わりません。バルブの配置が変わったり、燃焼室形状が変わったり、燃料/点火制御が変わったりしていますが、基本は同じです。しかし、トランスミッションは、昔とは全然違うものが実用化されています。メカが好きで、そういうものの開発をやりたいと思ったら、トランスミッションの開発は面白そうですね。ただし、エンジンは自動車メーカが開発しますが、トランスミッションは専業メーカが開発するので、会社知名度とか給与の面では少しシビアかもしれません。

さて、おそらくZ4に搭載されている7速DCTはGETRAG社の7DCI600というモデルだと思います。コルベットは、どこのメーカのどのトランスミッションを搭載しているのか、GMが明らかにしていますが、BMWの場合は、まるで自社開発しているかのごとき記載になっています。まあ、一般の人には自分のクルマのトランスミッションのメーカがどこかなど気にしないのかもしれませんが、比較的オーナーに趣味人が多いと思われるBMWがそういう情報をちゃんと記載しないのは、ちょっとダメなんじゃないかと思ったりしました。

それはともかく、とりあえずGETRAG社のサイトで資料を探してみようと思いました。
http://www.getrag.com/en/home/index.html
しかし、この会社はwebサイト上であまり資料を公開しないみたいで、7DCI600の資料は見つからず、7DCI700のPDF資料が一枚あるだけでした。これがTREMECなんかだと、サイトからサービスマニュアルまでダウンロードできたりするのですが。
同じトランスミッションの有名メーカでも、会社姿勢が全然違うんだなぁ、と思いました。自動車を趣味として楽しむ場合には、こういう資料を見る楽しみもあるので、趣味色の強いクルマは、なるべく情報が容易に入手できるようにして欲しいものです。