「風立ちぬ」を見てきました。
ゼロ戦設計者の人生が下書きになっているという事でしたが、ゼロ戦成分はほとんどなし。夢の情景描写が多すぎて、飛行機マニアとして楽しめるものではないです。あと、飛行機のエンジン音が人間の肉声らしく、気持ち悪い。
私はエンジニアとして、映画の中の描写にかろうじて興味を持てましたが、おそらくほとんどの人は、つまらないと思うでしょう。
私個人の評価では、最低ランクです。
ところでゼロ戦。
(いつの頃からから、「零戦」と書くのが主流になりましたが、Wikipediaによれば戦中でも「ぜろせん」と呼ばれていたとの記述があるので、私はあえて「ゼロ戦」と呼びます。私が子供のころは皆「ゼロ戦」と呼んでました。)
最近、飛行可能な唯一の機体をアメリカから貸与されているそうで、私の友人も見に行った話をしてくれるたのですが。
私はアメリカ在住時代に、リノのエアレースで実機のゼロ戦を見たことがあります。
その時の写真。
これ、飛んでました。今、日本にあるのと同じものかどうか知りません。少なくとも色は違うみたいですが。
本物かどうかもわからないです。映画撮影用とか、マニアが作ったレプリカという可能性もありますが、ゼロ戦として紹介されていました。
敗戦国の飛行機は終戦時にほとんど廃棄されてしまったので、貴重品です。アメリカ在住時には新旧多くの戦闘機を見ましたが、日の丸を付けていたのはこれだけです。
一方で対照的なのが戦勝国の飛行機。終戦時に大量に余った軍用機は民間に払い下げられて、様々な用途に使われました。その中でも戦闘機は趣味のスポーツ用途として購入した人が多く、そういう人たちが集まってレースを始めたのが、リノのエアレースというわけです。
そんなわけで、リノのエアーレースの主役はWW2時代末期の戦闘機。それらはゼロ戦のように時代考証を経て大事に大事に復元されるのではなく、派手なカラーリングを施され、レース用にスピードが出るように改造されています。
これはホーカー・シーフューリー。
派手なカラーリングが目を引きますが、それだけでなくコックピット・キャノピーの形状が当時とは異なります。レース用であることから、視界を犠牲にしてコックピットを胴体内に沈み込ませることで、空気抵抗を小さくしているのです。
こっちのムスタングはもっと凄くて、二重反転プロペラに改造されています。この構造によって、エンジンのトルク反力を打ち消すことができるので、機体前方のフレームを廃止して軽量化を図っているのです。
すでに大手航空機メーカではレシプロ戦闘機の開発を行っていないので、こういう改造はアマチュア航空研究家によって成されます。多くの日本人はアメリカ製品をバカにする風潮がありますが、アメリカの本当に凄いところは、趣味としてこういう事ができる人材と環境があるところです。