今回のフライトでは、たまたま座席がエンジンの真横の窓際だったのでエンジンの写真を撮りました。と言ってもフェアリングが被っているので、エンジン本体は見えませんが。
このエンジンはGeneral Electric社製GE90-115Bといいます。実は世界最大のジェットエンジンであると同時に、世界最大の推力を誇ります。最新の戦闘機F-22がアフターバーナーを炊いて全力運転したときの約4倍の推力を出します。世界最大のエンジンは意外と身近にあるんです。
それゆえに、このエンジンを搭載しているボーイング777-300ERは、前方から見るとほかの旅客機と比べて極端にエンジンが大きいことがわかります。クルマでも飛行機でも、私にとっては
「エンシンがデカイ」=「カッコイイ」
という式が成り立ちます。
まあ、ジェットエンジンの場合は排気速度の関係があるので、推力が大きいことが最高速度にはつながらないのですが。
実は私、学生時代にジェッエンジンのタービンブレード用の耐熱合金の開発に関係したこともあるので、ジェットエンジンも大好きです。
構造としてはレシプロエンジンよりもジェットエンジンの方が簡単で安定しています。コンロッドだとかカムだとか複雑な機構はなく、1本の軸に風車が付いているだけですから。だから、飛行機のエンジン始動チェックリストは、レシプロエンジンよりもジェットエンジンの方が断然短いんです。
しかも燃料は、ジェット燃料と言うと何か凄い燃料のように聞こえますが、実はあれは灯油です。ジェット燃料はケロシンだろうって? そうです。ケロシンです。そしてケロシンとは灯油の米語名です。ガソリンスタンドで灯油を売っているポンプをよく見てください。Kerosineと書かれているのが見つかるはずです。一応、ジェット燃料として厳しい規格が定まっていますが、それは安全のために品質を一定にするためで、エンジン自体は灯油で問題なく回ります。だから空港の展望デッキに行くと石油ファンヒータの匂いがするのです。
このエンジンが世界最大の推力と書きましたが、それはジェットエンジンの中での比較であって、人類が作ったエンジンで最大の推力を出すのはアポロ計画に使われたサターンV型のF-1エンジンです。もう半世紀近くも昔のことになります。
フロリダのケネディ宇宙センターに行ったときに実験用F-1エンジンを見ましたが、あれを見たときには
「人類の進歩は技術より情熱」
だと思いました。今時のスマートフォンの1万分の1以下の処理能力のコンピュータしかなかった時代に、よくあれだけのものを設計して製作して動かしたものだと。