コルベットはFRPボディなので、昔からカスタムルックの製作が盛んでした。表紙はC6のそんな一台。個人的にはカスタムルックのコルベットで、オリジナルよりカッコいいと思うデザインのものは、ほとんどありません。しかし、こういうのは他人が見てどうかということではなく、オーナーの満足度で決まるものなので、オーナーが気に入っていればそれでいいのです。
この号で私が注目したのは、電気駆動に改造されたC4コルベットです。個人が趣味で作ったものです。最近になって、電気自動車のスポーツカーも出てきましたが、まだまだ電気自動車は実用車としての開発が主流です。しかし、クルマはシャシーとスタイルが重要です。いくら高効率であろうと、トヨタ・プリウスやニッサン・リーフが趣味のクルマにはなり得ません。ただ電気自動車を作るのではなく、気に入ったクルマを電気自動車にしたいという気持ちで、コルベットをベースにしたそうです。
使用しているモータは、TransWarP 11。計算上、92Vで100hp、156Vで200hp、300Vで400hp、600Vで800hpとなるそうです。現時点で鉛バッテリーを13個搭載して156V。鉛バッテリーを使用しているのはコストの問題であって、今後はニッケル水素やリチウム・イオン電池が安価になるでしょうから、そのときにはバッテリーを交換して、制御ソフトを書き換えることでアップグレードが図れます。こういう自由度の高さが自作の長所ですね。
これから先、ガソリン自動車が走りにくくなる時代が必ず来ます。法律で規制されるか、維持費が高騰するか、その両方かもしれません。今、どんなに気に入ったクルマも20年後には乗れない可能性は高いです。そんな時代、既存のガソリン自動車を電気自動車に改造するビジネスが成り立つのではないかと思いました。
電気モータの駆動システムはガソリンエンジンのシステムに比べれば、非常に簡単です。バッテリーの小型化さえ実現すれば、ガソリンエンジンとトランスミッションを取り払って、かわりに電気モータを入れます。電気モータにはトランスミッションとクラッチが不要なので、今のトランスミッションがあるスペースに電気モータが収まってしまうでしょう。そして、ガソリンエンジンがあった場所とガソリンタンクがあった場所にバッテリーを積みます。制御ユニットは、余った場所に適当に積めるでしょう。基本的にはこれだけです。
ガソリンエンジンと違って、各機器の配置の自由度が非常に高いので、電気自動車用として汎用的なモジュールパーツが今後出てくるでしょうし、それらを組み合わせれば、既存のガソリン車を電気自動車に改造するのは、そんなに難しくないでしょう。
多分一番の問題は、ヒーター。家庭用エアコンのようなヒートポンプシステムを積むことになると思いますが、これがどのくらい小型のモジュールになるかということと、寒冷地でのヒートポンプは効率が期待できないところにあります。
そんなことを考えていると、スピダーが電気自動車化に最適であることに気がつきました。
ミッドシップで、ラジエターも後ろに積んでいるスピダーは、フロントフードの下に大きなスペースがあります。エンジンルームも大きいので、ラジエター、エンジン、トランスミッション、排気系を取り去って電気モータを入れると、かなり大きなスペースが余ります。バッテリーを積むスペースは十分です。車体はもとから軽いですし、何より、ヒーターすら付いていないので、ヒーターの心配をする必要がありません。ブレーキブースターもないので、バキュームの必要もなし。ただ、モータとパッテリーを積むだけで、一切の機能を損なうことなく電気自動車化が可能です。
残念ながら、コルベットは車両制御系が複雑で、電気自動車化のためには、かなりの機能を犠牲にするか、とても手間隙をかけるしかありませんが、スピダーなら簡単です。今すぐにでも始められるくらいです。
決めました。私は、いつか時期が来たら、スピダーを電気自動車化することにします。年齢的にクルマに乗れなくなるその日まで、スピダーだったら乗り続けることができると思います。