コルベットの車高を少しだけ落としてみることにしました。アメリカに住んでいる時から、あと少し車高を落としたいと思っていたのですが、アメリカでは住宅地や駐車場の入り口に「スピードバンプ」というコブが設けられていて、車高を落とすとこれに引っかかってしまうので、出来ませんでした。日本の道路は、アメリカに比べると平坦なので、日本に引っ越したときからやりたいと思っていたのです。
車高を少し落としたいと思う理由は、主に見た目です。1inch程度落とすと、ハンドリングも良くなると言われていますが、サーキットでタイムを削ったりする走りをするわけではないので、その辺は悪いほうに行かなければOKです。
コルベットは、元々車高調整が出来るようになっています。これは、カーボン・コンポジットのリーフスプリングの製造公差を吸収するためです。スタンダード・モデルのコルベットには、この車高調整機構に1inchほどの下げ代がありますが、Z51パッケージやZ06の場合は、ほとんど最低の車高にあらかじめセットされているので、下げ代はほとんどありません。そこで、あらかじめZIP ProductからLowering Kitを購入してあるので、今回はそれを使います。Lowering Kitと言っても、その内容はロングボルトなので数10ドル程度の価格です。日本車のように何十万円もする車高調整キットとは根本的に違います。
Loweringの具体的な手順は、webを検索すればいくらでも紹介記事が出てくるので割愛します。ここでは、コツみたいなものを。
フロントのLowering Kitを使う場合は、ノーマルの車高調整用のボルトを完全に抜いて、Kitのものと交換しなければなりません。そのために、スプリングからロワーアームを離してやる必要があります。通常、ロワーアームのボールジョイント側から切り離す方法が紹介されていますが、私はロワーアームの車体側の付け根を切り離しました。こちら側は、アライメント調整のためのカムボルトになっているので、抜く前に合いマークを付けておけば、ほぼ元に戻ります。それに、車高をいじったらアライメントは取り直しですから、この作業で多少アライメントが狂っても問題ありません。一方、ボールジョイントの切り離しは、特殊工具が必要ですし、一応その工具も持ってはいますが場所が狭くて作業性があまり良くないので難易度が高いです。
スタンダード・モデルのコルベットであれば、Lowering Kitを使わなくても1inch程度は下がります。
右がノーマルの調整ボルト。左がLowering Kitのボルトです。ノーマルは、アームに当たるゴムのブッシュが変形してしまっています。ノーマルとKitの違いは、このブッシュの部分にあって、左のKitのものは薄くなっています。ここが薄い分だけ、車高の下げ代が確保できるというわけ。ちなみに、ノーマルはこのブッシュの材質がゴムですが、Kitのものはポリウレタンになっています。
安価に、より車高を下げる方法として、このブッシュを切り取ってまったり、または調整ボルトを完全に抜いてしまうという方法もありますが、その場合ロワーアームとスプリングが直に接触することとなり、お勧めできません。コルベットのスプリングは、コンポジット材なので、鋼製のものより傷や衝撃で割れたり折れたりし易いからです。
フロントに比べると、リアは簡単です。タイヤも外す必要はありません。ジャッキで車体を持ち上げるのは、作業のために身体を車体の下に入れる必要があるためで、身体が入るなら、ジャッキアップの必要もありません。
写真で、木っ端で支えているのが、コルベットの特徴でもあるモノリーフのスプリングです。いわゆる板バネですが、昔のクルマのように、これでホイールの位置決めをしているわけでもありませんし、もちろんリジッドアクスルでもありません。教科書どおりのダブルウィッシュボーンで、アームの長さはかなり長くとられています。モノリーフは、軽量化に貢献していますし、プログレッシブな特性も優れています。板バネ=「古臭い劣ったサスペンション形式」と思っている人がいまだにいますが、コルベットのモノリーフ方式は、コイルスプリングのタイプよりも、その軽さやバネ特性において優れています。また、材質がいわゆる強化繊維プラスチックなので、鋼製のようにヘタる心配もありません。その辺、わからずに適当な記事を書くエセ自動車評論家のいかに多いことか。
これがリアの車高調整ボルトです。下がノーマル、上がLowering Kitのもの。Kitの方が長くなっていますが、この長くなった分だけ車高の下げ代が増えることになります。リアもフロント同様にゴムブッシュを撤去すると下げ代が増えますが、こちらも同様な理由でお勧めしません。前述したようにLowering Kitは数10ドルと安価な部品なので、ケチらず購入しましょう。
Lowering Kitを使っても、Z06の場合はノーマルからフロントが1.5cm程度しか下がりません。リアは3~4cmくらいは行けますが、フロントが下がらないので、そんなに下げ代があっても無駄です。これは、直径が大きなタイヤを入れた場合に有効になります。
とりあえず、作業は終了しました。見た目は、ほとんど変わりません。他のコルベットと並べたりしなければ、一般の人にはわからないでしょう。私は、乗り込むときにちょっと下がっていることに気がつくくらいです。
これでしばらく走って、ブッシュ類を落ち着かせたら、再び車高を調整して、アライメントに出します。