1万と400ccのエンジンのブロックはBig BlockのTall Deckを使います。
Big BlockとかSmall Blockというのは、元々はシボレーが作ったものですが、今では一種の規格となっています。PCで言うところのAT-XやSF-Xなどと同じと考えて良いです。
Big Block用、Small Block用として、大小さまざまなメーカが無数のパーツを供給しています。それらのパーツの中から自分の目的に合ったパーツの組み合わせを見つけて、それでエンジンを組むのが、アメリカンV8の楽しみ方の一つとなっています。
Big Blockは1958年に誕生し、今日まで世代を重ねて、最新モデルはGeneration VII(7)と呼ばれています。今回使用するのは第4世代のMark IV(4)。最新型がGeneration VIIなのに、なぜ第4世代がMARK IVなのかというと、MARK V(5)が出る時にGMが名称を"MARK"から"Generation"に変更したのです。理由は、FORDがMARK Vの商標権を持っていたからです。
MARK IVは1965年から72年まで使われました。アメリカ車の黄金期です。一般乗用車から、ありとあらゆるレースエンジンにも使われて、もっともアフターマーケットでの開発が行われ、ノウハウが蓄積された世代になります。それゆえ、今でもハイパフォーマンス・エンジンを作る場合にはMARK IVが使われることが多いのです。
私のC3コルベットは、Bog Blockエンジン搭載ですから、基本的には特に車両側の改造なしにそのまま載せ替えられます。
そして、Tall Deck。デッキハイトが標準の9.8インチより0.4インチ高い10.2インチのものを言います。
図面左側がStandard Deck、右側がTall Deck。
もともと、トラックなどの商用車用に用意されたブロックですが、デッキハイト以外は、標準デッキのブロックと共通なので、パワーが欲しいハイパフォーマンスの改造車やレース用に多く流用されました。
このブロックで1万と400ccにするには、ボア径4.6インチで、クランクシャフトは4.75インチのストロークを使います。
日本ではマーケットが小さくてなかなか考えられないですが、アメリカでは新品のエンジンブロックを作って売っている会社がいくつもあります。
その中で、スポーツ車/レース車に使われる有名なブランドは二つ。DARTとMARLIN。
これはMARLIN IV。
こっちはDART M。
当時には存在しなかったアルミブロックもあります。
DART M Aluminum。Vの谷間に鋳鉄ブロックにはないリブがあります。
これらのブロックを購入して、その他のパーツを組むのはボルトオンというわけにはいきません。仕上げの加工が必要です。しかし、組み合わせるクランク、コンロッド、ピストンなども同じシヨップで購入すれば、仕上げ加工から回転部品のバランス取りまで、すべて加工してから、送ってくれます。
ショップ側でキットとして設定しているものもありますし、組み立てるスキルや工具がない人にはショートブロック(いわゆる腰下)の完成品としても売っています。
たとえば、これはSkip White Performanceという会社が販売しているショートブロックのキット。1万400ccのエンジンの設定です。すべて計測済、加工済、バランス済みで送ってくれるので、基本的にはあとは自分で組むだけ。
7.5ccのドームトップピストンもキットに入っているので、これにたとえば燃焼室容積117ccのヘッドを組み合わせれば圧縮比10.54のエンジンになります。