2014年3月22日
純正キャリパ仕様調査
リプレイス用のキャリパについて調べていると、キャリパを考える上でとても重要な情報の入手が難しいことに気が付きました。
それはピストン径。プレーキの効きを決めるもっとも基本的な数値であるにも関わらず、レース用の一部のキャリパを除き、仕様値が公表されていません。自動車は、完全な工業製品であるにもかかわらず、自動車雑誌は感覚的な記事に終始していて、基本的な数値の議論がおろそかになっているものがほとんどです。これは雑誌というものが基本的に文系人間によって製作されているからではないかと考えています。
そういう雑誌が文化を作ってきてしまったので、自動車部品の広告も感情・感覚に訴えるものばかり。だから、自動車のアフターマーケット・パーツにはいわゆる「つぼ商法」が多いのではないかと考えています。
油圧を使っているプレーキは「パスカルの原理」のもっとも基本的なカタチです。したがって、マスターシリンダーとキャリパーのピストン(ボア)径、それとブレーキ・ブースターの直径によって効きが決まります。パッドのメーカがどうのとか、キャリパーの剛性がこうのとか語るのは、ピストン径を知った後のこと。まず、一番大事なことはピストン径です。
前の記事で書いたStoptechのキャリパーや、AP Racingのキャリパーの車種別キットが、どういうピストン径に設定されているのか、調べてもデータが見つかりません。一体、メーカーはどういうつもりなんだろうか。
これらの数値は、後で直接問い合わせることにして、今回の記事では純正プレーキのピストン径を調べてみました。これも調べるのは結構苦労しました。メーカーの公表値は基本的に見つからず、マニアの人が直接計測した結果とか、互換パーツメーカのサイトの仕様値からの寄せ集めなので、私自身が数値を確認していません。したがって、これらの数値に間違いがあっても、文句を言わないように。あくまでも、自分用の記録ですから。単位は全てミリで統一しました。元ネタではインチのものもあったのですが、計測時にミリの寸法をインチで計測してるらしきものがあって、その時点でインチに丸められた誤差がのっている可能性があります。たとえば、マスターシリンダーのボアは1インチだそうですが、もしかしたら25mmをインチのノギスで計って1インチと言っているのかもしれません。
キャリパ仕様値 (マスターシリンダのボア径は全車前後25.4mm)
車種 | ピストン径 | ピストン数 | 合計ピストン面積 | マウント | ロータ厚 |
---|---|---|---|---|---|
フロント |
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97-04 C5 Corvette | 44.5mm | 2 | 3103 mm2 | スライド | 31.8 mm |
05-13 C6 | 40.5mm | 2 | 2577 mm2 | スライド | 32 mm |
06-13 C6 J56, Z06 | 33mm | 6 | 2565 mm2 | 固定 | 32 mm |
09-13 C6 ZR1 | 30/34/38mm | 6 | 2747 mm2 | 固定 |
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リア |
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97-04 C5 & | 45mm | 1 | 1590 mm2 | スライド | 26mm |
05-13 C6 | 45mm | 1 | 1590 mm2 | スライド | 26mm |
06-13 C6 Z06, J56 | 30mm | 4 | 1413 mm2 | 固定 | 26mm |
09-13 C6 ZR1 | 30mm | 4 | 1614 mm2 | 固定 |
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マウントが「スライド」というのは、ピストンが片側にしかない、いわゆるスライディング・キャリパーで、固定というのは対抗ピストン・キャリパーです。対抗ピストンの場合、スライドする必要がありませんから。
C5とC6のブレーキブースターの径が異なるかどうか、不明なのですが、マスターシリンダーのボア径は同じようですから、おそらくブースター径も同一だと仮定したうえで、上記の表を眺めていると、いくつか興味深いことが判りました。
C5とC6のスタンダード・モデルは同じキャリパーを使用していると言われていましたが、実際にはピストン面積が異なっています。C6の方がC5よりフロントのピストン面積が小さい。すなわちC6はフロント・ブレーキの効きが弱くなっています。一方でリアの面積は同じですから、C6は前後バランスも少しリアに寄せたということになります。C6に乗っていてブレーキの効きに不満がある人は、C5のキャリパーに変えるだけで、ブレーキの効きが強くなるはずです。そういえば確かに、C6に乗っている人が、ブレーキの効きが弱いと言っていました。私はC5の効きに不満を持ったことはなくて、むしろもっと弱いほうがコントロールがしやすいと思っていたので、Z06用のパッドのせいかなぁ、などと思っていいました。
さらに、C6Z06やZR1の6ピストンキャリパーよりも、C5の方がピストン面積が大きいので、C5のフロントブレーキが最強ということになります。高速走行時になると、ブレーキが空気に放出する熱量と車両の運動エネルキーとの熱収支がブレーキの能力を決めますが、ブレーキの放出熱量が運動エネルギーを上回っている街乗りレベルの速度では、C5の方がストッピングパワーは高いですね。
J56オプションやZ06, ZR1の対抗式キャリパーには2種類あって、異径ピストンを使っているものがあります。異径ピストンを使っているものは、パッドがピストン毎に独立しているものではなく、1枚ものになっているなっているはず。独立パッドであれば異径ピストンにする必要はないですから。
まあ、この数字を眺めるだけで、ご飯3杯はいけます。
- by arai
- at 18:16