40th Reno Air Race
09/11-15/2003


世界的に有名なRenoのエアレースを見に行ってきた。我が家からRenoまではクルマで約4時間。さすがに日帰りは無理なので、Lake Tahoeのホテルに泊まることにして、4泊5日の日程とした。
Reno Air Raceのオフィシャルwebサイトはここ。
http://www.airrace.org/
Renoエアレースは、飛行機で行われるレースで、文字通り世界最速のレースである。


レースが行われる飛行場へと続く道。
砂漠の中を片側一車線の田舎道が続いている。


これが、レースの行われる飛行場。
向かいに見える山まで、ずーっと砂漠である。この砂漠の中にガイドパイロンが立っていて、それが大きな円形のコースを作っている。グランドスタンドの前が短い直線コースになっていて、この写真は、そのグランドスタンドから撮影したもの。
コース全長は、一番人気のアンリミテッドクラスで約8.5mile。


エアレースで最も人気があるクラスが、アンリミテッドクラス。すなわち改造無制限のクラス。そして、そのクラスの中で主流の飛行機が、このP-51ムスタングだ。第2次世界大戦終結後、戦闘機の主流はジェットエンジンに移ったため、プロペラ機の高性能な機体は、その後の開発が無い。したがって、大戦末期の機体が、今でも高い性能を誇っているわけだ。
もっとも、ここに出場している機体は戦争中のオリジナルではなく、エアレース用に改造に改造が重ねられている。格闘戦をやるわけではないので、旋回性能を犠牲にして翼を切り詰めたり、視界を犠牲にしてコックピットを機体に沈み込ませるなどして、前面投影面積を減らし、最高速度が上げられている。また、エンジンやフレームにも現代の技術が導入されており、当時とは比較にならないほど性能が上がっている。


ジェットエンジンのクラスもあるが、音や見た目の迫力では、プロペラ機のアンリミテッドクラスにはかなわない。


これは珍しい、サーブのドラッケン。個人所有の機体だそうだ。
アメリカの金持ちは、趣味でジェット戦闘機を持っていて、自分で操縦して楽しんでいる人も多い。さすがに現役の戦闘機は買えないので、外国の戦闘機である事がおおい。我が家の近所にあるオラクルという会社の社長は、ミグ25を持っていることで有名だが、これを夜中に飛ばすものだから、周辺住民からの苦情が絶えないらしい。


基本的に機体は個人所有だ。会社名義になっているものもあるが、それらの会社は個人所有の会社だったりするので、結局は個人の持ち物と同じだ。
機体の所有者がパイロットであることも珍しないことから、このレースはプロ化されていない、アマチュアのためのレースだということがわかる。これだけ規模が大きくて、これだけマシンに金がかかっていても、賞金やスポンサーからのお金で利益をだせるものではない、というわけだ。だから、言ってみればこれは草レースである。
しかし、もちろん参加者はスーパーリッチマンなので、中にはこんな風に屋根まで付いた完璧なパドックを用意してしまうチームまである。


これはアンリミテッドクラスのP-51だが、エアレース用に改造されていることが良くわかる機体だ。まずはコックピットの小さいキャノピー。こうしてキャノピーの突出部の最小限に抑えることにより、空気抵抗を減らしているのである。それからプロペラも特殊だ。3枚羽のプロペラを2重にしているのだが、前方のプロペラは幅が小さくなっている。こういう2重構造のブロペラは、エンジンのトルク反力を打ち消すために反転構造にするものだが、このブロペラのピッチをみると、どちらも同じ方向に回転するようだ。何か、特別な空気力学的な考えに基づいて、採用されているのだと思われるが、僕の専門外なので、理由ははっきりと推測できない。
また、他のP-51と見比べるとわかるのだが、エンジン部のフレームが異なっている、というよりもほとんどフレームが無い構造になっている。機体構造そのものにまで手が入れられているらしい。見た目はP-51だが、中身は別物と言っても良いだろう。


レース用の機体なので、このような綺麗なカラーリングの機体も多い。これはホーカー・シー・フューリーで、エアレースで人気のある機体の一つ。他の機体と同様に、キャノピーが小型化されている。


アメリカのエアショーでは爆撃機も大人気だ。戦争の主役は爆撃機。彼らこそが自国を勝利に導いた立役者だからということらしい。


パドックでは、このように機体整備のシーンを見ることもできる。この機体は、アンリミテッドクラスのベアキャットで、やはり人気のある機体。


上の写真のベアキャットが、カウルを被るとこうなる。
これもまた、コックピットを沈めて、キャノピーを小さくしている。それにしても、プロペラの太いこと。


例えば、商業化されているクルマのトップカテゴリーのレースなどでは、ピット作業を見ていると、ピット要員はテキパキと素早くシステマチックに動き、非常にプロフェッショナルを感じさせるのだが、このエアレースは違う。前述したように、規模が大きくても、世界的に有名であっても、基本的には草レースなのである。だから、ピット作業もゆっくりで家族的。まるで、自宅で趣味の飛行機をいじっているのと同じなのだ。もっとも、これらのエアレーサーは、どれもみんな趣味の飛行機なのだが。
写真のオジサン。T-6という人気ワンメイククラスの飛行機を整備中なのだが、ヨタヨタとやってきて、ゆっくりとした動作で、歌を歌いながらエキゾーストマニホールドを取り付けている最中。そこには緊張感のかけらも感じられない。ガンガンガンとハンマーで叩いて、
「んー、ちよっと凹んじゃったい。」
とかやっているのだ。
ああ、偉大なる草レース。


フォーミュラ・ワンと呼ばれるクラスの機体で、エアレース専用に作られた一人乗りの小型機。このクラスは今風のプロペラ機として、なかなかカッコイイ機体が多い。


パドック内を飛行機用のV12ロールス・ロイスエンジンを積んで走り回っていたトラック。このエンジンをどこかに配達中なのか、それとも誰かに売りつけたいのか、あっちこっちで止まって、話し込んでいた。


ホームストレートから最初のターンを旋回していくレース機達。


ホームストレートを駆け抜けていくP-51。
使っているカメラは、Nikon Coolpix5700。ニコンのコンパクトデジカメの最高機種だが、飛んでいる飛行機を撮るのに、このデジカメでは辛い。タイムラグが大きい、AFの合焦速度が遅い、合焦しないなど、ほとんどまともな写真がとれない。やはり、マニュアルフォーカスもできる一眼レフじゃないとダメか。
というわけで、D100の購入を検討中なのである。


アメリカのイベントではお馴染みの、スカイダイバーによって運ばれてくる星条旗。最近は、どのイベントも大抵はこの形式だ。


エアショーの目玉の一つ。The Thunderbirds。
これは素晴らしかった。映画的な演出。BGMの選曲も良い。激しい演技と静的な演技をほどよくミックスしている。
特に後半の、「God Bress America」の曲をバックに真青な空に大きな白いループを描いたときは、感動的でするあった。アメリカ国籍でなくても、アメリカへの愛国心が芽生えてしまう。


レースに勝ったチームは、クラッシックの消防車で、グランドスタンド前をパレード。


レースとレースの間には、様々なエキジビションが用意されていて、レースの準備のときに観客を飽きさせないようになっている。
これはジェットカーのデモンストレーション。


もちろん、一流のパイロットによるアクロバット飛行も多数行われる。


レースは5日間にわたって行われる。僕たちは4泊5日の日程だが、そのすべてをレースに費やしたわけではない。レースに行ったのは、そのうちの2日間だけで、あとはLake Tahoe周辺で観光したりのんびりして過ごした。
Lake Tahoeは、Renoからクルマで約1時間。ネバダ州とカリフォルニア州の境にある。Renoのエアレースのときには、Reno周辺のカジノホテルに泊まるのが一般的だと思うが、ちょっと離れてLake Tahoeに泊まるというのは、特に夫婦で行く場合などに、良い選択だと思う。


泊まったホテルは、ハイアット・リージェンシーのコテージ。コテージの建物がボロくて、階上の人の足音が聞こえたり、排水の音が聞こえたりしたが、環境は最高。コテージのため本館と離れているので、カジノに行ったりレストランに行ったりするのはちょっと不便だが、目の前がプライベートビーチになっているので、バルコニーから出てすぐに湖畔というロケーション。
ホテルに戻ると、つい一時間前までは、レースの喧騒の中にいたとは思えないほど、静かな環境で落ち着くところだった。


我が家では、意外にも妻がエアショー好きだ。妻の友人達も、飛行機のことはよく知らなくてもエアショーは好きという人も多いようだ。
アメリカと日本では飛行機に対する接し方が全然違う。加えて、アメリカの青い空。エアショーはアメリカを感じさせる絶好のイベントの一つだと思う。
もし、アメリカに来て、何かアメリカらしい観光をしたいと思うなら、エアショーをお勧めする。