ウォーターポンプ交換
ボンネットフードの裏側に、LLCがすじ状に付いていることに気がついた。ウォーターポンプからLLCが漏れていて、真下にあるサーペンタインベルトにたれて飛び散り、ボンネットにすじ状に付着させていたことを突き止めた。
ほぼ同時期に、時々パワステのアシストが無くなるという現象も発生していた。これは、朝一番で発生していることが多いので、かの有名なモーニング・シックネスだと思っていた。しかし、これもウォーターポンプからのLLC漏れが原因で、サーペンタインベルトにLLCが付着し、滑ってしまい、パワステポンプを駆動するプーリーが回せなくなっていた。
ウォーターポンプのLLC漏れ個所は、どうやらティアホールのようだったので、ベアリングのシールがダメになったらしいと判断。ウォーターポンプを交換することにした。
新しく購入したウォーターポンプは純正のACデルコ製ではなく、TRW製の互換品。理由は、純正品より$20ほど安かったから。純正のリビルト品を探したのだが、たまたま在庫がなく、新品を買わざるを得なかった。価格$172.99。
他に、ウォーターポンプガスケットも購入したのだが、これはウォーターポンプに付属していた。まあ、またいつか、使うこともあるだろう。
まず作業に取りかかる前に、ウォーターポンプの固定ボルトに工具が届くかどうか確認する。最近のクルマはエンジンルームに余分な空間がないので、一番苦労するのが、工具を入れたり、手を入れたりする方法や場所の確保となる。こういったことは、マニュアルには書かれていない事がほとんどなので、初めて行う作業の場合には、事前に手持ちの工具ですべての作業が行えるかどうかチェックするのは重要だ。ボルトは全部で6箇所。そのうちの1箇所はパワステポンプのプーリーが邪魔して、素直に工具が入らない。プーリーを外すのは専用工具が必要だし、ポンプ本体を外すのは、ウォーターポンプを外す作業よりももっと大変に思える。結局、エクステンションにユニバーサルジョイントをかませて、ソケットを届かせることはできたのだが、ユニバーサルジョイントがあると、トルクレンチのトルクが正確にかからないのは問題。しかし、まあ他に方法もなく、これで進めることにする。
僕は、冷却系の作業が嫌いだ。冷却系の作業をするには、LLCを抜く必要があるが、その量は多く、また完全に抜くのは難しいので、作業中にあちこちから残ったLLCが流れ出てきてうっとおしい。それに、ゴムホースを抜くというのも、ほとんどの場合固着していて力が必要だ。かといって、力任せに無理やり抜いたりしようとすると、ホースが切れたりして面倒だ。こんな具合で、冷却系の作業はできるだけしたくなかった。
以下、順を追って説明。
1.冷却水を抜く
ラジエター右下にドレンコックがあるので、そこから抜く。エンジンプロックのノックセンサーを外せば、ブロック本体に残ったLLCも抜けるのだが、これはとても狭い場所で難しいので、パス。
2.スロットルとエアクリーナーをつないでいるエアフロの付いたダクトを外す
これは、よくやる作業なので簡単。エアフロのコネクタを抜くのを忘れないようにする。
3.サーペンタインベルトを外す
テンショナーを緩める専用工具があると便利。通常のレンチでも緩めることはできるが、専用工具はそんなに高くないし、楽だし安全。どこのカー用品店に行っても売っている。
4.ホース類、センサーのコネクターを外す
コネクタはともかく、ホース類を外すのには苦労する。冷却系の作業の中で一番嫌いなのがこれ。それと、ホースを外す度に、中に残っていたLLCが流れ出てくるのもうっとおしい。
5.ウォーターポンプの固定ボルトを外す
事前に工具の入れ方を決めてあったので、あまり苦労しなかった。
6.ウォーターポンプ取り外し
固着しているかと思って覚悟していたが、プラハンで2,3度コンコンとやったら簡単にはずれた。外した瞬間に大量のLLCがエンジンブロックより流れ出てきた。LT-1のウォーターポンプは、ブロックの水穴よりも高い位置にホースが付いているので、ブロックのLLCを抜かなかった場合は、ここでLLCが出てくる。
ウォーターポンプを取り外した写真がこれ。下に見える黄色いのがデスビ。デスビキャップを交換しようと思ったら、さらにクランクシャフトプーリーまで外さなければならないというバカげた設計になっている。同様に、ここまで外してやっと、スパークプラグコードを外せるようになる。デスビキャップやスパークプラグコードは、電装系消耗品の代表みたいなものだが、その交換にこれほどの作業を必要とするということは、GMはよほどこれらの部品の信頼性を上げたのだろう。ちなみに、スパークプラグコードは、純正品がシリコンコードだった。
プラグコードは、いつか機会があったら交換しようと思って、新品を用意してあったのだが、ここまでバラしても交換できたのは右バンクのみ。左バンクは、プラグコードが、補機類の下を通っていて、これらを取り外す必要がある。しかし、これにはエアコンのコンプレッサやパワステのポンプなどがあり、とても大変そうなので断念した。LT-1は、エンジン単体状態で、補機の取り付けまですべて済ませてから、車体に搭載しているらしい。ラインでの組み立ては非常に楽だと思われるが、後のメンテナンスが非常にやりにくいエンジンだ。ちなみに、右バンクのプラグコードの交換も、そう簡単ではなく、それだけで1時間以上はかかった。実は、3番のプラグコードに亀裂が入っていて、これを交換したかったのが、プラグコード交換の最大の目的だったのだが、3番は不幸なことに取り外せない左バンク。あきらめるしかない。左バンクのプラグコードの交換は、エンジンを降ろすくらいの覚悟が必要となる。
7.センサとサーモスタットの移設
古いウォーターポンプから、温度センサとサーモスタットを取り外し、新しいウォーターポンプに取り付ける。
ここで問題が発生。ウォーターアウトレットネックが、新しいウォーターポンプに取り付かない。新しいTRW製のウォーターポンプはサーモスタットの部分の加工が、純正品と少しだけ違っていて、アウトレットネックが当たってしまう。でも、この程度ならたいしたことはない。アウトレットネックの当たる部分をサンダーで削り飛ばして対処できた。
他にも違うところがあるかもしれないと思い、純正品とTRW製を比較してみると鋳物が少しだけ違う部分が見つかった。しかし、コルベットのLT-1では問題になるようなものではなかった。同じLT-1を積んでいるカマロやファイヤーバードでも問題はないのだろうか。今回は、たまたま対処可能な問題だったので助かった。まあ、$20程度の差だったら、やっぱり純正品を買うほうが良いと思う。写真は、上が純正品、下が新しいTRW製。
水温センサは、水漏れを起こさないように古いシール剤を綺麗に取り除いて、新しいテフロンテープを巻いて、取り付ける。
8.ウォーターポンプ取り付け
本来ならば、エンジンブロック側の古いガスケットを綺麗に取り除く必要があるのだが、写真でもわかるように、取り付け面が奥のほうにあって、スクレーパーが入らない。古いガスケットは、固着していて簡単に剥がれそうにもなかった。そこで、あまりやりたくなかったのだが、古いガスケットはそのままに、新しいガスケットの両面に液体パッキンを塗って、取り付けることにした。もし、次にウォーターポンプを外すことがあったら、液体パッキンで固着していて、非常に苦労することになるだろうが、その時はその時だ。
取り付けボルトは、水穴に貫通しているので、ネジ部から漏れが生じる可能性も考え、ボルトのネジ部にも液体パッキンを少量塗っておく。ボルトは、トルクレンチを使い、規程トルクで締め付ける。前述したように、1箇所だけユニバーサルジョイントを使用しているところがあるので、そこだけ気持ちトルクを大きくしておく。
あとは、逆の手順で組み立てていく。
サーペンタインベルトにひび割れが見られたので、新品に交換した。
液体パッキンを使ったので、組み立て後も24時間はLLCを入れずに放置しておく。
24時間放置後に、LLCを入れる。前回のLLC交換日が不明だったので、新しいLLCを用意した。純正品ではないが、HavolineのDEX-COOL対応品。純正品は赤い色だが、これはオレンジ色。でもまあ、DEX-COOL対応と書いてあるので問題ないだろう。これを約2倍に薄めて注入した。
さて、エンジンをかけてみると、どこからかわからないが、LLCが漏れているようだ。サーペンタインベルトからLLCが飛び散っている。真っ先に思い浮かんだのは液体パッキンのこと。やっぱり、液体パッキンじゃあダメだったんだろうか。だとすると、エンジんを降ろす必要があるだろう。
とりあえず手探りで、漏れ個所を探ろうとしたのだが、ウォーターポンプは複雑な形状をしているので、どこから漏れているのか、ハッキリわからない。
エンジンを降ろすか? だったら面倒だから修理工場に入れるか? 悩みつつ、この日は意気消沈して寝た。
その夜、多分夢を見たのだと思うが、ハッキリと覚えていない。翌朝、目が覚めたときには、やるべきことがわかっていた。
ホースバンドを確認してみると、案の定、締め忘れていた。眠っている間に、頭の中が整理されて、忘れたことに気がついたのだろう。なんとも不思議なものだ。
ホースバンドをしっかり締めて、改めてエンジンを始動してみる。問題なし。漏れている気配はない。そのまま20分くらいアイドリングさせて、エア抜きをする。
ほぼエアが抜けたと思われるので、次は1時間ほど走って、さらにエア抜きと漏れの確認。まったく問題なし。
以上で、ウォーターポンプ交換は完了。
それにしても、たかがウォーターポンプの交換であるが、LT-1の場合は何から何まで大変だった。もう、車載状態でこのエンジンをいじるのは、やりたくないなぁ。