NHRA Drag Race
2001年8月3〜5日に、SEARS POINT RACE WAYで行われたドラッグレース"NHRA FRAM Autolite Nationals"に行った。僕が行ったのは最終日の8月5日。決勝が行われる日である。日本に住んでいたときに、何度かドラッグレースを見に行ったし、自分自身もRRCのドラッグレースに何度か出たことがある。数あるレースの中で、僕がもっとも好きなのが、このドラッグレースだ。残念ながら、日本での人気は今ひとつだったが、アメリカはドラッグレースの本場。本場のドラッグレースが、家から40分くらいのところで見られるとは、なんと幸運なことか。
SEARS POINTは、ゴールデンゲートブリッジの向こう。ワインで有名なSONOMAにある。ドラッグレースの日は、ものすごく混むと聞いていたので、早めに家を出た。この時点では、まだクルマはそれほど多くなく、快適なドライブ。天気は快晴。まあ、夏のカリフォルニアで雨が降ることは滅多になく、いつもこんな感じの天気だ。
サーキットのゲートを抜けて、チケットを渡した後は、ずーっとこんな景色の中を進む。ゲートを抜けているので多分サーキットの敷地の中だと思うが、本当にこの先にサーキットがあるのか不安になるくらいの距離を進んだ。
これはモーターホーム専用の駐車場。レースは予選を含めて3日間かけて行われるので、モーターホームでやってきて、ここで3日から1週間くらい過ごす人たちも多い。
日本では何万円もする高額なパドックパスを買わないとパドックに入ることはできないが、ここではパドックパスといものが存在していない。観客席に向かう途中がパドックになっていて、パドックの中を抜けて席に向かう。
当日購入したプログラムには、
Every Car's a Rocket;
Every Ticket's a Pit Pass
と書かれていた。各チームのピットも、観客に見せることを考えて、マシンや工具、作業机の配置をしてある。
アメリカのスポーツではおなじみの、国歌斉唱。この巨大な星条旗は、空からスカイダイバーが運んできたもの。
トップフューエルのバーンアウト。これは、タイヤを暖めたり、グリップの具合をみたり、エンジンの調子を見るためにスタート前に一回行う。煙は、タイヤから出ていて、タイヤの溶けるにおいがドラッグストリップを包む。この匂いを嗅ぐと、「ああ、ドラッグレースだなぁ。」と感じる。
一組がゴールすると、すぐに次の組のバーンアウトが始まる。こんな感じで、次から次へと走るので、空いた時間がなく、退屈しない。エンジンがかからなくて、スタートラインに並べなかったり、スタート地点でトラブルを起こして進行を止めてしまうようなマシンは一台もいなかった。日本では、スタートラインでもたもたして、進行が遅れることがしばしばあって、興ざめしてしまうことがしょっちゅう。しかし、さすがに本場アメリカ。そんなことは一切なく、進行はとてもスムーズだった。
一度走ると、次に走るまでの間に、エンジンやミッションを完全にオーバーホールする。この過程も、すべてパドックで見ることができる。このときにコンロッドやピストンといった、荷重のかかった部品をすべて交換している。さすがアメリカだなぁと思ったのは、外したコンロッドやピストンに、日付と出したタイム、それにドライバーのサインを入れて、その場で売ったりすること。とても欲しかったのだが、やはり人気のお土産で、競争率が高くて手に入らなかった。
バルブとかバルブスプリングといった小物は、子供にあげたりしていた。
これは、ファニーカーのクラス。トップフューエルの次に速いタイムを出す。トップフューエルとファニーカーのタイム差は、だいたい0.2秒くらい。最高速度は、1MPH程度の差。どちらも、1/4mile(400m)を4秒台。最高速度は320MPH(500Km/h)以上を出す。
ドラッグマシンに比べたら、F1マシンなんて子供のペダルカーみたいなものだ。と、言ったアメリカ人がいるが、ドラッグレースを見れば、それも納得できるだろう。ちなみにエンジンは、排気量8L、出力は8000ps。
こんなマシンのレースが毎週見られるのだから、F1の人気がないのもうなずける。
レースは、トーナメント方式で行われるので、負けたチームは早々に引き上げる準備をしている。基本的に、ドラッグレースはタイムを競っているのではなく、隣のマシンより早ければ勝ちとなる。そして勝てば次のラダーに進める。だから、勝つマシンは、何度もレースを行わなければならず、耐久性や安定性も要求される。レースに勝った場合、次のラダーまでの間に、エンジン、ミッションのオーバーホールを行うので、それもレースの見どころになっている。
走っているパトカーは、本物のハイウェイパトロール。パトカーと地元走り屋とのドラッグレースをやっている。パトカーが先行しているのは、手前の走り屋のクルマにハンディキャップを与えているため。皮肉なことにパトカーより走り屋のクルマの方が速いので、走り屋の方が後からスタートして、ゴール地点で大体一緒になるように調整されている。
他に、パトカーと走り屋が同時にスタートして、サイレンを鳴らして走るパトカーを振りきってゴールするといったスタートも行っていた。
どちらも、パトカーが勝てばブーイング。走り屋が勝てば、大喝采だ。
こんな感じで、レースの間にはエキジビションも行われている。
パラシュートをたたんでいるお姉さん。これがきちんと開かなければマシンは止まりきれないわけで、とても重要な仕事。でも、お客さんに訊ねられれば、笑顔でパラシュートのたたみ方を説明してくれる。ヨーロッバ式の日本のレースでは、パドックは緊張に包まれていて、とても気軽に聞ける状況ではないが、アメリカのレースはすべてがフレンドリーで、誰もが笑顔で応えてくれる。ドライバーも、レース直前まで観客の相手をしていて、「お、そろそろ行かなきゃ。ごめん。」なんて感じ。
ちなみに、パラシュートはゴール後の止まるときに使うだけではなく、レース中にコントロールを失ったときにも使われる。左右に振られたマシンを立て直すのに、パラシュートを開いて、車体の振られを抑える。
目の前を全力で通過する、2台のファニーカー。皆、耳を押さえているのがわかるだろうか。8000psのマシン2台が全力で走っている音といったら、それはもう大変なものだ。あまりに大きな音を聞くと、耳は本当に痛くなる。ドラッグレースを見るときに耳栓は必須。耳栓をしていても、耳を押さえずにはいられない。それに、耳だけではなく空気も震えるのが体で感じることができる。耳栓はパドックのどこのショップでも手に入る。さまざまな種類があるので、お好みのものを、必ずレース開始前に買っておくこと。
ちなみに、デジカメでこのタイミングの写真を撮るのにはとても苦労した。